カナリヤの飼料
カナリアの主食は禾本科植物(イネ科やカヤツリグサ科)の種子と油脂分を多く含む草本科(花の咲く普通の草)の種子を配合したものです。禾本科ではヒエ、アワ、キビ、カナリーシード、エンバク、小麦があります。草本科ではエゴマ、ナタネ、ニガーシード、麻の実、ケシの実、アザミの種子等があります。
これらをどのように配合するか、何を重点的に食べさせるかは飼い主の知識、経験、研究心によって異なります。季節や飼育目的、品種による違いでも異なります。
カナリアが最初に飼われたのはスペインで15世紀と言われます。当時はカナリーシードとエゴマやナタネ、麻の実を配合したものだったようです。その後、キビ、アワも配合されるようになりました。また品種改良によって大型品種にはエンバク、小麦が与えられ、小型品種や大きさに制限のある品種は油脂分を抑えたりアワを中心とした配合になったりしました。20世紀になってからヨーロッパでもヒエが配合されるようになりましたが日本と異なり配合率は少ないものです。
一方日本では当初オスしか輸入されず、1770年代(天明年間)に初めてメスが輸入されています。日本でも最初はカナリーシードが鳥と一緒に輸入されました。当然国内でもカナリーシードの栽培もおこなわれました。当時はカナリーシード3に対してエゴマ1~2の配合率だったのですが、栽培が軌道に乗らず代わりにキビを与えるようになり、春にはナタネも与えると良い、とも言われていました。戯作者で知られる滝沢馬琴はカナリアの愛好家で飼育本も書いていますが、その中でカナリアにはキビが良くヒエは身が軽くなるので与えてはいけないと書いています。
その後、明治時代にはヒエが安価で容易に入手できることからヒエ中心の配合が広まり、アワも与えるようになりました。カナリーシードは高価な輸入品でしかなく、配合から外されてしまったのです。
江戸時代にはエゴマやナタネの配合率が3分の1~2だったのに対し、この頃から4分の1程度にまで下がっています。価格的な理由なのかどうかわかりませんがヒエが中心になったようです。これは現在にまで継承されています。
ヒエは国産品しかなかった頃と現在では品質に大きな隔たりがあります。国産品は粒が大きく栄養的にもアワやキビと差はなかったのですが、現在輸入されているヒエは小粒でカナリアだけでなくフィンチまで食べ残す程品質低下が激しいものが増えています。輸入品がほとんどで為替相場によっては品質に劣るものでも配合されることがあります。また産地指定で購入しようとしても時期によっては入手できないことがあります。国内でも飼料用に栽培しているところもありますが価格は輸入品から比べると同じヒエとは思えないほど高価です。
アワはカナリアがあまり好まないと言われています。確かに配合率も低く、食べ残しも目立ちます。しかし栄養的にはヒエより高く食べさせたい穀物です。アワ穂の状態だとかなり食べるので配合より穂で与える方が効率的でしょう。
キビは江戸時代こそ主食とされましたが明治以降はヒエに比べて高価でもあったことからほとんど配合から姿を消しています。しかしヨーロッパではカナリアの主食の重要な位置を占めており、輸入カナリアには欠かせないものです。他の穀物より品質が安定しているので是非配合に加えたいところです。
カナリーシードはその名の通りカナリアが最も好む穀物です。主食として配合率は高くあって当然ですが現在は1割程度しか配合されていません。体格や体型保持には欠かせないので3~5割の配合でも良いものです。
エンバクと小麦は大型カナリアには必要です。そのままでも加工品(オートミール、ビスケット、パン等)でも常に与えることで大きな体を保持できるのです。
油脂分を含む草本科種子ではエゴマが最も適しています。脂肪分と蛋白質等のバランスが良いのです。ニガーシードも栄養的にエゴマ同様です。欠かせない種子です。ナタネは安価に入手できるので配合油脂分の主役のようになっていますが、もともと菜の花が終わって結実する頃の季節的な飼料でありエゴマの代用品のようなものだったのです。油脂分は多いのですがそれ以外が心もとないのが欠点です。
麻の実は意外に思われるかもしれませんがヨーロッパでは配合に含まれます。またエッグフードに入っている場合もあります。大型品種だけでなく馴れればどの品種でも食べるようになります。ただ粒が大きく殻が硬いので食べるのに時間がかかります。
ケシの実とは薬物ではなく食用のヒナゲシの種子です。種子というより顕微鏡的な小さい種子なので食べるのかと疑問に思われるでしょう。しかしカナリアは丁寧に一粒ずつ食べます。あまりに小粒なので配合では使わず個別に与える方が効果的です。栄養的には悪くはありませんが価格的にやや高く、与える目的としても嗜好品的なものなので無視しても良いかもしれません。
アザミの種子は野鳥の好物です。実はニガーシードもアザミの仲間なのです。入手できれば与えてみるのも良いでしょう。これも栄養はあるものの入手が難しいのと継続的に与えることが困難なので無視しても構いません。
配合するにあたって気を付けるのは何を食べさせるか、何を好むのか、何の目的で配合するのか等を明確にしておくことです。単に配合するだけなら市販品で十分ですが、実際には市販品は品質に疑問を持たざるを得ないヒエやエゴマが入っていることがあります。自分で個別に配合することがカナリアのためになり、飼い主の知識と経験を豊かなものにするのです。
基本的に繁殖を控えた初春から油脂分を増やし、繁殖を終えて換羽になる頃から徐々に油脂分を減らし、夏場には油脂分は最低限に減らします。秋の彼岸を過ぎる頃から再び油脂分を増やし始め、初春まで一定量に抑える方が良いようです。
下記に主な配合例を紹介します。
Aは国内で市販されている割と良心的な配合です。
Bはヨーロッパの配合例ですがナタネとニガーシードが入れ替わることもあります。
Cもヨーロッパの例です。
Dはイギリスの例ですが極端です。
Eは昭和30年代の日本の配合例です。
Fはヨーロッパのヨークシャー飼育の配合例です。
これらをどのように配合するか、何を重点的に食べさせるかは飼い主の知識、経験、研究心によって異なります。季節や飼育目的、品種による違いでも異なります。
カナリアが最初に飼われたのはスペインで15世紀と言われます。当時はカナリーシードとエゴマやナタネ、麻の実を配合したものだったようです。その後、キビ、アワも配合されるようになりました。また品種改良によって大型品種にはエンバク、小麦が与えられ、小型品種や大きさに制限のある品種は油脂分を抑えたりアワを中心とした配合になったりしました。20世紀になってからヨーロッパでもヒエが配合されるようになりましたが日本と異なり配合率は少ないものです。
一方日本では当初オスしか輸入されず、1770年代(天明年間)に初めてメスが輸入されています。日本でも最初はカナリーシードが鳥と一緒に輸入されました。当然国内でもカナリーシードの栽培もおこなわれました。当時はカナリーシード3に対してエゴマ1~2の配合率だったのですが、栽培が軌道に乗らず代わりにキビを与えるようになり、春にはナタネも与えると良い、とも言われていました。戯作者で知られる滝沢馬琴はカナリアの愛好家で飼育本も書いていますが、その中でカナリアにはキビが良くヒエは身が軽くなるので与えてはいけないと書いています。
その後、明治時代にはヒエが安価で容易に入手できることからヒエ中心の配合が広まり、アワも与えるようになりました。カナリーシードは高価な輸入品でしかなく、配合から外されてしまったのです。
江戸時代にはエゴマやナタネの配合率が3分の1~2だったのに対し、この頃から4分の1程度にまで下がっています。価格的な理由なのかどうかわかりませんがヒエが中心になったようです。これは現在にまで継承されています。
ヒエは国産品しかなかった頃と現在では品質に大きな隔たりがあります。国産品は粒が大きく栄養的にもアワやキビと差はなかったのですが、現在輸入されているヒエは小粒でカナリアだけでなくフィンチまで食べ残す程品質低下が激しいものが増えています。輸入品がほとんどで為替相場によっては品質に劣るものでも配合されることがあります。また産地指定で購入しようとしても時期によっては入手できないことがあります。国内でも飼料用に栽培しているところもありますが価格は輸入品から比べると同じヒエとは思えないほど高価です。
アワはカナリアがあまり好まないと言われています。確かに配合率も低く、食べ残しも目立ちます。しかし栄養的にはヒエより高く食べさせたい穀物です。アワ穂の状態だとかなり食べるので配合より穂で与える方が効率的でしょう。
キビは江戸時代こそ主食とされましたが明治以降はヒエに比べて高価でもあったことからほとんど配合から姿を消しています。しかしヨーロッパではカナリアの主食の重要な位置を占めており、輸入カナリアには欠かせないものです。他の穀物より品質が安定しているので是非配合に加えたいところです。
カナリーシードはその名の通りカナリアが最も好む穀物です。主食として配合率は高くあって当然ですが現在は1割程度しか配合されていません。体格や体型保持には欠かせないので3~5割の配合でも良いものです。
エンバクと小麦は大型カナリアには必要です。そのままでも加工品(オートミール、ビスケット、パン等)でも常に与えることで大きな体を保持できるのです。
油脂分を含む草本科種子ではエゴマが最も適しています。脂肪分と蛋白質等のバランスが良いのです。ニガーシードも栄養的にエゴマ同様です。欠かせない種子です。ナタネは安価に入手できるので配合油脂分の主役のようになっていますが、もともと菜の花が終わって結実する頃の季節的な飼料でありエゴマの代用品のようなものだったのです。油脂分は多いのですがそれ以外が心もとないのが欠点です。
麻の実は意外に思われるかもしれませんがヨーロッパでは配合に含まれます。またエッグフードに入っている場合もあります。大型品種だけでなく馴れればどの品種でも食べるようになります。ただ粒が大きく殻が硬いので食べるのに時間がかかります。
ケシの実とは薬物ではなく食用のヒナゲシの種子です。種子というより顕微鏡的な小さい種子なので食べるのかと疑問に思われるでしょう。しかしカナリアは丁寧に一粒ずつ食べます。あまりに小粒なので配合では使わず個別に与える方が効果的です。栄養的には悪くはありませんが価格的にやや高く、与える目的としても嗜好品的なものなので無視しても良いかもしれません。
アザミの種子は野鳥の好物です。実はニガーシードもアザミの仲間なのです。入手できれば与えてみるのも良いでしょう。これも栄養はあるものの入手が難しいのと継続的に与えることが困難なので無視しても構いません。
配合するにあたって気を付けるのは何を食べさせるか、何を好むのか、何の目的で配合するのか等を明確にしておくことです。単に配合するだけなら市販品で十分ですが、実際には市販品は品質に疑問を持たざるを得ないヒエやエゴマが入っていることがあります。自分で個別に配合することがカナリアのためになり、飼い主の知識と経験を豊かなものにするのです。
基本的に繁殖を控えた初春から油脂分を増やし、繁殖を終えて換羽になる頃から徐々に油脂分を減らし、夏場には油脂分は最低限に減らします。秋の彼岸を過ぎる頃から再び油脂分を増やし始め、初春まで一定量に抑える方が良いようです。
下記に主な配合例を紹介します。
A | B | C | D | E | F | |
---|---|---|---|---|---|---|
ヒエ | 50 | 10 | 80 | 10 | ||
アワ | 20 | 10 | 10 | 10 | ||
キビ | 30 | 20 | ||||
カナリーシード | 10 | 30 | 50 | 80 | 20 | |
エンバク | 10 | |||||
小麦 | 10 | |||||
エゴマ | 10 | 10 | 10 | 10 | ||
ナタネ | 10 | 10 | 10 | 20 | 10 | 10 |
ニガーシード | (10) | 10 | ||||
麻の実 | 10 | |||||
100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
Bはヨーロッパの配合例ですがナタネとニガーシードが入れ替わることもあります。
Cもヨーロッパの例です。
Dはイギリスの例ですが極端です。
Eは昭和30年代の日本の配合例です。
Fはヨーロッパのヨークシャー飼育の配合例です。