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カナリアと青菜

カナリアに限らず日本では飼い鳥に青菜を与えることは当然の飼養管理とされています。
毎日与えることで鳥の健康促進に役立つと昔から言われてきました。実際、栄養学的にも青菜の効用は証明されています。
ところが欧米はもちろん最近飼い鳥の流行が顕著なアラブ諸国でも青菜に対する考え方は全く異なります。青菜は副餌であり補助的に与えるものという考え方が主流のようです。週に一度程度与えれば良いような感覚が多いそうです。欧米でも飼い鳥本には毎日与えるべきと書かれていますが、実行しているのはマニアやブリーダーだけのようです。
何故日本でだけ青菜文化ともいうべき管理方法ができたのか面白いことです。一つには日本には青菜の種類が豊富でほぼ年中入手可能で安価でもあるということがあげられるでしょう。特に鳥の好む、栄養的にも最適なアブラナ科アブラナ属の野菜が豊富に栽培されており、家庭菜園でも容易に作れるという手軽さがあります。アブラナ属には小松菜やカブ、キャベツ、大根、白菜、水菜、青梗菜等容易に入手できる野菜が多くあります。
小松菜に代表される癖のない柔らかな青菜は海外ではあまり見ないようです。海外で鳥に与える青菜の代表はサラダ菜、チコリ、サラダホウレンソウ、ケール、ハコベ、タンポポ等です。これ以外には詳しく解説された資料がないのですが、小松菜のようなアブラナ科はケール以外あまり与えていないようなのです。存在しないのか入手が難しいのか不明ですが飼い鳥本でも青菜については種類には書かれていないのです。その代りにサプリメントとしてビタミン類は様々な種類のものが販売されており、生の青菜より顆粒状のサプリメントを与えることで栄養的には十分であると考えられているのでしょうか。
青菜で面白い(実際には面白くない経験を持っておられる方も多いと思いますが)話があります。昭和30年代から43年まで日本からアメリカに多くの赤カナリア(レモンカナリアもいたようです)が輸出されました。これは第二次大戦前はアメリカにはドイツから大量のカナリアを輸出していたのがドイツの敗戦と国土の荒廃でカナリアの飼育どころではなく、鳥自体もいなくなっていたので、同じ敗戦国でも早急に復興してカナリアも増えていた日本に輸出の依頼が来たそうです。多くのカナリアブリーダーがこの恩恵にあずかり、多くのカナリアを生産し輸出したのです。赤カナリアが日本に輸入されたのが昭和28年ですから驚くべき速さでの復興と言えます。ところがアメリカ側からはあまり価格面で良い待遇は得られなかったのです。その理由が日本産のカナリアは飼っているうちに色褪せするからだというのです。日本側から言わせるとごく普通の世話をするだけで色褪せなどするはずがないというものでしたが聞き入れられず安価なままの輸出に終わったのです。なぜ日本産のカナリアが色褪せするのかが判明したのは輸出が終わる頃になってからでした。理由は青菜を毎日与える日本の飼い方に対して、アメリカではほとんど与えていなかったのです。配合飼料(カナリーシード、アワ、キビ、ナタネ)と水だけでの飼育が当然とされていたのです。カナリアはペットでありながら消耗品であって自宅での繁殖など考えない国民性だったようです(今は違いますが)。青菜を与えるなど考えもしなかったのでしょう。
カナリアだけでなくフィンチもインコも顆粒状のサプリメントより生の青菜を好みます。季節によって与える種類を替えたり、留守をする時には日持ちする青菜や野菜を与えたり青菜の種類が多いと単に与えるだけでなく選択肢も増えてきます。特にカナリアは配合飼料より青菜を多く食べる鳥です。言ってみれば主食でもあるわけです。生の青菜を食べさせることで心身ともに健康でいてくれるのなら毎日与えるのは何ら難しいことではないでしょう。
普通に与えられている青菜でも最近はキャベツの害が言われるようになりました。蓚酸を含むので鳥体に良くないというものです。実際にはどれだけの弊害があるのか不明ですがキャベツだけを長期間与え続けるのは確かに良くないようです。
キャベツの近縁種であるブロッコリーは花芽を食しますがカナリアは花芽だけでなく葉も茎も食べます。ブロッコリーは日持ちするので数日の留守には最適な野菜と言えるでしょう。キャベツのような蓚酸害もないようです。こちらは毎日与えるより非常用として慣れさせておくと良いでしょう。
サラダ菜は海外で最も与えられている青菜です。もちろん国内でも与えられています。年中出回っていて手軽ですが栄養的に小松菜にはかないません。
白菜は水分が多く非常用としての利用が良いように思われます。鳥によっては青い部分より白く硬い部分を好む物がいます。やはり非常用と考えた方が良いでしょう。
チンゲンサイ(青梗菜)は価格が安定しているので小松菜が高値の時の代用になるでしょう。もちろん毎日与えても構いません。
春のハコベはカナリアだけでなく多くの鳥が好む野草です。栄養的に優れており繁殖期に与えるのは効果的です。タンポポの若葉も同様です。
これ以外にもきゅうり、スイカ、リンゴ、ニンジン等が青菜の代用になりうる野菜です。あくまでも代用でありまた与えるにしてもおやつ感覚で少量与えると良いでしょう。特に夏場のスイカはカナリアの大好物です。赤い果肉より白い部分を好み、皮まで食べてしまいます。食べ過ぎて下痢を誘発することがあるので少量にしておきましょう。これはメロンも同様です。
毎日の世話で青菜は当然与えているという方、時々しか与えない方、飼い方は人それぞれですが青菜には栄養だけでなくカナリアに安心感を与えうる何かがあるような気がします。

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